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第2回「教えて! 先輩!」
HUMAN vol.023

「いろいろな目」で物事を見ることの大切さ

教員志望の学生が若手教師に、若手教師が中堅・ベテラン教師に話を聞きに行く連載企画「教えて! 先輩!」。第2回は、教員生活5年目の千葉萌子先生が、12年目の牧孝次朗先生に話をお聞きました。体育研究の仲間でもある2人が、研究活動と学校の仕事の両立のコツや、教師間のコミュニケーションのあり方、若手と中堅の違いなどについて語り合いました。(収録:2018年12月)

若手だからできること、中堅だからできること

千葉牧先生とは小学校教師の体育の研究会でご一緒させていただいていますが、研究分野に体育を選ばれた理由はお聞きしたことがありませんでした。どうして体育を選ばれたのですか。

初任で勤めた世田谷の小学校では、全員が何かの教科の研究会に所属しなければならなかったのですが、僕は大学時代に特定の教育分野を学んでいなかったので、とくに専門がなかったんです。何にしようかなと考えて、体を動かすことが好きで、自分もサッカーをやっていたから体育がいいかなと。それが理由です。千葉先生はどうして体育を選んだのですか。

千葉もともと体育が好きで、体育の免許も取得していました。今の職場にも体育に取り組んでいる先生が多かったので、自然にこの分野になったという感じですね。
研究活動をご一緒していると、牧先生はとても視野が広いと感じます。私は自分一人で突っ走ってしまうことが多いので、広い視野をもつコツを教えていただきたいと前から思っていました。

研究部長をやらせてもらっていて、幅広い意見に耳を傾けなければならない立場なので、視野が広いように見えているのではないでしょうか。もちろん、いろいろな人と話し合ったり、一緒に新しいものをつくり出していったりすることは大切だと思っています。僕は教師になって4年目の頃に自分で研究授業をやるようになったのですが、それ以降はとくに、研究のやり方についていろいろと考えるようになりましたね。

千葉研究活動は、学校での授業のように子どもを前にして行うものではありませんが、私はできるだけ、子どもたちの姿を思い浮かべながら研究したいと思っています。

千葉先生は、年長の先生方も多い研究会でたくさん意見を言うから、すごいなと思いますよ。

千葉研究会は学外のいろいろな先生と出会えて話を聞ける貴重な時間だと思っています。でも、学校の仕事との両立はなかなか難しいですよね。

自分の仕事ももちろんあるし、同僚の先生方との関係もありますからね。バランスを取るのは、確かに難しいと思います。僕は、研究会があるときはそれを周囲にはっきり伝えて理解してもらうようにしています。もちろん、教師の仕事の本分は学校にあるわけですから、学校で何かがあったらそちらを優先すべきだと思っています。

求められていることがわかれば、やるべきことが見えてくる

千葉行事の提案をしたりするときに意識していることはありますか。

体育の行事の場合は、過去の取り組みの内容をしっかり踏まえるとか、過去の反省点をほかの先生に教えてもらうとか、提案前に何人かの先生の意見を聞くとか、そんな作業が大事かなと思います。あとは、提案するときには図などを添えてわかりやすくするといったことですかね。これまで何か困った経験があったのですか。

千葉例えば、ベテランの先生が求めていることと、若い先生がやりたいことって微妙に違っていたりしますよね。その両方の立場を理解したうえで提案する内容を考えるのはすごく難しいです。

おそらく、そこで僕のような中堅の教師が力を発揮できるのではないかと思います。若い先生が提案する前に話を聞かせてもらって、より広い視点でアドバイスをするとか。

千葉そういう先生がいるのは、とてもありがたいと思います。私の周囲にもそういう先生がいて助かっているのですが、でも、それにいつまでも甘えていてはいけないとも思うんです。むしろ、私が自分より若い先生の話を聞けるようにならなくちゃって。もう5年目なので。

その意識も大事だけれど、5年目くらいの先生に求められるのは、とにかくいろいろなことを経験してみるということだと思いますよ。学校全体に関わる行事を経験することで、よりわかりやすい提案の仕方や、先生方へのよりよい伝え方を学ぶことができるのではないでしょうか。

千葉今の私は、自分だけがわかったつもりになっていて、まったく伝わっていないということが少なくありません。
やはり、経験して学ばなければならないのですよね。

僕も5年目くらいのときは、いろいろやってみて、どんなことでも吸収しようとしていました。周囲の先生にフォローしてもらったりしながら。

千葉校長先生からも、新しいチャレンジをどんどんするように言われています。でも、何をしたらいいんだろうって、いつも考えてしまうんです。

具体的にどんなチャレンジをすればいいか確認していますか。

千葉確かに、そこは不明確かもしれません。

何が求められているかをしっかり聞いた方がいいと思いますよ。子どもたちの体力を高めていくことなのか、縄跳びなどを授業に取り入れていくことなのか、授業の新しいアイデアを出すことなのか──。そこが明確になれば、やるべきことが見えてくるのではないでしょうか。

「完璧な仕事」を求めてはならない

千葉牧先生は、5年目の頃に失敗した経験はありますか。

もちろん、たくさんありますよ。5年目くらいは、いろいろ失敗を重ねて学んでいく時期と言えると思います。むしろ、失敗を恐れて何もやらない方が問題です。失敗しても周りの先生は優しく見守ってくれると思うし、問題があったらアドバイスしてくれると思います。

千葉そう言っていただけると「今は失敗を恐れずチャレンジする時期なんだ」と思えますね。でも、経験を重ねていけば、失敗しなくなるものなのでしょうか。私は牧先生くらいの年齢になっても、相変わらず失敗を続けているような気がしています。

どうしてそう思うのですか。

千葉初任のときは仕事がすごくたいへんだったのですが、5年目の今も同じくらいたいへんだから(笑)。新しい壁に次々にぶつかるし、自分が成長できているという実感があまりないんです。

経験すればしただけ、視野も広くなるし、気づきも多くなることは確かだと思います。でも、そのつど取り組むことは違うわけだから、結局、やってみないと成功するか失敗するかはわからないですよね。僕も、年齢を重ねたからといって、それだけ失敗する確率が減ったかといったら、そんなことはないと思う。

千葉そうですよね。担任する子どもたちは毎年変わるし、担任している間にもどんどん成長していくし……。

そうそう。だから、僕たちが日々やらなければならないことも変わっていくわけです。同じことを繰り返しているわけではないから、成功することもあるし、失敗することもある。そう考えておくのがいいのではないでしょうか。

千葉5年目の自分と12年目の自分で一番違っているところはどこだと感じていますか。

うーん、どうだろう。いろいろなことに柔軟に対応する力や、工夫する力はついているのかな。毎年、必ず一つ新しいことをしようということは以前から決めているんです。授業のやり方を少し変えてみるとか、板書の字をもっときれいにするとか。そういうことの積み重ねで成長できているところはあるかもしれないですね。

千葉私はまだ一校目なのですが、二校目、三校目となると、変化も感じられるようになるのでしょうか。

それはあると思います。僕は今二校目ですが、前の学校から異動するときに、この学校の校長先生から「二校目は最大の研修の場です」という言葉をかけていただきました。「いい学びになるから、ぜひいろいろなことをやってみてほしい」と。
それでこの学校では、担任以外のクラスで授業をやってみたり、新しいアイデアを加えた指導案をつくって授業をやってみたりと、積極的にチャレンジするようにしました。自分から動くと、ほかの先生方とのコミュニケーションも深まっ ていくんですよ。僕の授業を見た先生から、A4一枚分の感想を渡されたこともあります。ここがよかったけれど、こんなところは気になった。そんな貴重な意見が書いてありました。

千葉私も次の学校に行ったときには、そんな変化が感じられるといいなと思います。もう一つ、今一番不安なのは、「このまま退職まで仕事を続けられるのかな」ということなんです。5年間働いても、なかなか気持ちの余裕がなくて、この状態がずっと続いたら厳しいなって。

その気持ちはよくわかります。教師の仕事ってやらなければならないことが多いし、すべてを全力でやろうと思ったら、本当にきりがないですよね。僕も5年目くらいのときには、「すべての仕事を全力で完璧にやりたい」と思っていたのですが、先輩の先生に「仕事を完璧にやろうとすると、必ず行き詰るよ」と言ってもらって、ちょっと見方が変わりました。いろいろなことを追い求めると、逆に一つ一つのことがおろそかになってしまう。だから、できることをできる範囲で一つずつやっていけばいいんじゃないかって。大切なのは、たくさんある仕事の一つ一つに優先順位をつけることだと思います。

千葉あれもこれもこなそうと頑張っているうちに、頭がパンクして、全部できなくなったりしたら困りますものね。

だから、今の千葉先生の頃の自分と現在の自分に変化があるとすれば、優先順位のつけ方がうまくなったということかもしれません。やるべきことをうまく整理する方法が身についてきたという実感はありますね。

悩みや思いを共有できるような環境を

千葉自分より年下の先生方とはどのように接していますか。

「自分の経験を若い先生に伝えることで、自分の年齢になる頃には自分よりずっといい先生になってほしい」と話す素晴らしい先生がこの学校にはいます。その先生はそれだけでなく、「授業をいつ見に来てもいいよ」と言ってくれたり、勉強会を自ら主催してくれたりするんですよ。
その先生のスタンスが一つお手本かなと感じています。そういったスタンスをみんなが意識するようになれば、若手とか中堅とかベテランということに関係なく、授業のことや子どものことを対等に話すことができるようになると思うんです。

千葉若手にもいろいろな工夫が求められますよね。私、今年から「若手研」という集まりを始めてみたんです。お互いの専門領域のことを順番に話していくのですが、質問の時間になると、シーンとなってしまうんです。

それぞれの専門分野の話だと、なかなか内容が共有できず、質問がしにくいということがあるかもしれませんね。例えば、もっと身近なことをテーマにしてみるというのはどうでしょうか。授業の中で新しくやってみたこととか、今悩んでいることとか。

千葉なるほど、それはいいですね。

いずれにしても、素晴らしい取り組みだと思いますよ。教員同士のコミュニケーションの機会は、意図的につくらないとなかなか生まれないですから。とくに学校の規模が大きいと、学年内のコミュニケーションだけで手いっぱいになってしまいますよね。

千葉コミュニケーションがとっても大事だなと思うのは、担任をやっていると、自分がやっていることが正しいのかどうかがわからなくなることがあるからです。ほかの先生の授業を見る機会はあまりないので、自分がいいと思ってやっていることが本当にいいことなのだろうかと考えてしまいます。

ええ、よくわかります。僕も新任2、3年目の頃はすごく不安だったので、隣のクラスの授業をいつも覗いていて、「牧先生、覗きすぎ」と言われたりしていました(笑)。とがめられたわけではなく、むしろ「熱心だね」と褒めていただきましたが。
自分がやっていることが正しいかどうか確信がもてないというのはまさにその通りで、それぞれの先生が自分の胸のうちにいろいろなことをため込んでしまって苦しむということも少なくないと思います。悩みや思いを共有できるような環境が学校全体にあるといいですよね。

子どもと日々過ごせる仕事は最高

千葉私は未婚ですが、牧先生は結婚していらっしゃいますよね。私生活と仕事の両立で悩んだりすることはありますか。私は、仕事の量が今のままだったら、結婚してから教師を続けるのは難しんじゃないかと思うことがあります。

僕の妻も教師で、とても仕事に熱心な人です。今は二人目の子どもの育休中なのですが、子どもができる前は、「こんなに仕事熱心で、子どもができたらどうするのかな」と正直心配していました。でも、実際に子どもができてみると、意外にすぱっと割り切って、早めに仕事を切り上げて帰宅するようになりました。人は誰でも環境によって変われるものなのだと思います。だから大丈夫ですよ。
大切なのは、「周囲の人たちから上手に助けてもらう」ということだと思います。職場の人たちに自分の状況を話して、「この部分はやりますが、この部分はお願いします」ときちんと伝えることが大事です。

千葉私、人に頼るのが苦手なんですよね。「自分で100%できないとだめ」みたいなところがあって……

そういう時期なんだと思いますよ。そうやって頑張ることはもちろん大切なことですが、自分の中に悩みを溜めてしまうのはよくないですよね。困っていることがあったら、とにかくいろいろな人と話をしてみることだと思います。
年長の先生方も同じ経験をしているはずなので、決して嫌がったりはしないはずです。むしろ、頼ってもらえてうれしいと感じる先生も多いと思いますよ。

千葉やっぱり、うまくやろうと考えすぎないことが大事なんですね。

そう思います。ぎりぎりまで我慢に我慢を重ねて、行き詰ってしまうと、対処法も限られてしまいます。早い段階で、自分の弱みを恥ずかしがらずに出して、助けてもらうことです。そういう環境づくりを自分からしていくことが必要ではないでしょうか。

千葉ありがとうございます。最後に、牧先生の今後の教員人生プランを聞かせていただけますか。

プランかー(笑)。同期の中には主幹になっている人もいますが、僕は今のところそういうことは考えていないですね。子どもと日々過ごせる仕事は最高だなと思って教員になりましたから、今は子どもたちと過ごす時間を大切にしたいと考えています。
今の僕のテーマは、「授業力をつける」ということで、子どもの「できた」「わかった」をもっと引き出せる教員になりたいと思っています。まずはその目標達成に向かって努力していくつもりです。

千葉私は、牧先生くらいの年齢になった時に「いつでも授業を見に来ていいよ」と言えるような先生になっていたいです。若い先生から「千葉先生の授業を見に行っていいですか?」と言われるように、これからも頑張っていきます。

テキスト:二階堂 尚(ライター)
牧 孝次朗
プロフィール
1984年12月6日生まれ。教員歴12年目。所属 目黒区立菅刈小学校。
体育を中心に研究を行っているが、どの教科でも子どもの「できた」「わかった」を引き出せる授業力が身に付けられるように、日々の授業実践や研究活動に取り組んでいる。
インタビューを終えて
本当に記事になるのかな?千葉先生と直後に話をしました。それぐらい日頃思っていることについて自然と話をさせてもらい、あっという間に時間が過ぎました。
自分自身まだまだ経験不足で勉強が足りないと思うことばかりですが、今回このような機会をいただき、千葉先生と同じ経験年数の時はどうだったか、今の自分はどうか振り返る貴重な機会になりました。また、千葉先生の仕事に対する思いを聞き、自分もさらに頑張ろうという刺激にもなりました。
今回対談をさせてもらい、様々な仕事がある中で、じっくりと話す機会がなくなっているのではないかとも感じました。思っていることを伝え合える環境はとても大切だと思うので、そういった環境づくりを自分たちのような中堅と呼ばれる世代が作っていけるようにしていきたいと思います。今回話をさせてもらったことの多くは、私自身が先輩方から教わってきたことばかりです。学ばせていただいたことを次の世代の人達に伝えるとともに、自分自身も学び続ける教師でいられるよう今後も精進していきます。
不安や大変さといった「ネガティブ」なことを叫ぶ前に、いや、叫びたくなるときこそ、自分がもっている理想や希望を語れるような、それに向かって楽しめるような、そんな先輩でありたいと、今回の対談を終えて感じました。そして、これから先生を目指す皆さんにも、そうであってほしいと思います。いろいろ大変なことはある、でもそれはいつでもどこでも同じです。だったら明るく、前を向けるような、おもしろいことを考えられるような、そんな学校にしていきたいじゃないですか。
そういう先生や学校が増えていき、子どもたちの理想や希望も膨らんでいくことを願ってやみません。
千葉 萌子
プロフィール
1992年1月18日生まれ。教員歴5年目。所属 目黒区立中根小学校。
子供達に、運動することの楽しさを味わってほしいと考えている。そのため、分かってできる体育の授業の研究するとともに、朝や休み時間において様々な運動感覚を遊びながら培っていきたいと考えている。
インタビューを終えて
このインタビューのお話をいただき、教員という仕事をする中で、自分が困ってることってなんだろう、先輩に聞いてみたいことってなんだろうと、自分の教職について振り返ってみました。初任から今まで、自分を振り返る間もなく、がむしゃらに働き続けてきた5 年間だったことに、気が付きました。そして、やりがいを感じる一方で、無限な仕事に不安も感じていました。今回、牧先生にその不安をぶつけさせていただきました。
インタビューを終えて、狭い世界だからこそ、校内外でコミュニケーションをとることの大切さを再確認できました。
尊敬する先輩の体験談を聞くことで自然と安心できました。ネガティブな悩み相談だけでなく、チャレンジしてること、したいこと、子どもたちへの熱い想いを共有し合う時間を、忙しい毎日の中でも意図的に作っていくべきだと感じました。そして、何より牧先生のような素敵な先輩方との出会いに感謝して多くを吸収するとともに、自分もそんな先輩になっていきたいと強く思いました。
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